鈴が咲く【前編】
聖林本家


「山下翔太、
ただいま帰りました」

翔が
大広間に正座してそう言った。


聖林本家の最深部。

当主として
奥に座った私。

その前には
重役である御老主様達が座っている。


「久しいな、翔太!」

「しっかりやっておったか」



男子であり、
おじい様からの信頼も厚かった翔は
御老主様達に好かれている。





夏休み前半、翔と私は本家へ戻り、
翔は挨拶をしていた。




「はい。
お久しぶりです。」


「お前にはまた
いろいろと任せよう」

「ありがとうございます」

「また手合わせでもどうだ」

「はい。ぜひお願いします。

咲様に教えを請い、
稽古をつけていただきました。
きっと、期待にこたえてみせます」


正式な場では
私の事を「咲様」と呼ぶ翔。


私の名前が出て
一瞬動きが止まった御老主様達。

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