君への距離~僕らの未来~



――暑い夏の日、



俺はふと思い浮かぶことがある。






それは今から9年前の、ある小さな恋のお話。






「あ―ああ、ガキ2人は泥酔やな…」



原付をひっぱって歩きながら中塩純は呆れて笑った。




「もういやや、この役まわり…」






「シオんちで飲み直そー♪」


千鳥足の少年が真夜中にもかかわらず声をあげれば、



「さんせーけってー♪」





これまた目がすわってしまった様子の泥酔娘も負けじと大きな声をあげる。





「「シオ~!?」」




シオが2人のずいぶん後ろを歩いていると、酔っ払い達は立ち止まり声を合わせて振り返った。




2人はどこか似ているとシオは思っていた。

―チビで、童顔、小動物みたいな黒目がちの大きな瞳…


ちょこまかとすばしっこい動き、酒に弱いとこ、涙もろいとこ






『兄妹みたいだな!お前ら』


いつか、リョースケにそう言われたケンが柄にもなく怒ったことがあった。
一週間くらい拗ねて、リョースケいわく『セーシンテキクツウ』を与え続けたケンのシカト攻撃。

その怒りの真相を俺だけが知っていた。



「リョースケのやつ、杏にも言ったのか?」




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