永遠の果て
 会うのはこの間、昴君といるところを見られて以来。
 なのに何の変わりもなく、直樹は私に笑顔を向ける。

 迷いはなかったはず、なのに絡まった糸くずみたいなモヤモヤした塊が、私の心を侵食し始めた。私の決意なんて、所詮はこんなものなのだろうか。
 少し、自分にがっかりした。

 モヤモヤのせいか、眩しいような笑顔のせいか、口を開けることが出来なかった。

「一緒に来る?」

 とつぜんの問いに、顔を上げる動作で答える。
「今日さ、当直だから今から見回りに行かないといけないんだ。詩織を置いていくわけにはいかないし、だから。行こう?」

 言葉と一緒に、骨ばった指先が私を捕らえた。
 いつだって温かい指先。手のひら。
 顔も目も、もう背けることは不可能だった。
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