永遠の果て
「詩織」
 もうすぐ昼休みも終わろうかと言う頃。糸がピンと張ったように、緊張を顔に貼り付けた直樹が、私を呼ぶ。
 直樹の喉から発せられる、心地の良いテノール。

「なに?」
 なんとなく、何が起こるかは予感していた。もう付き合って二ヶ月経つ。
 でもなんだか照れくさくて、彼が愛おし過ぎて、知らないフリを続けてきた。

 心臓が、おかしな音をたてて口から出てきてしまいそうだ。

 壊れ物を扱うかのように、しっかりしていて、長く延びた腕が、私を包み込む。
 それに応じて、大きな背中に手を回す。

 このまま、この人の中に溶けてしまいたい。恥ずかしさと嬉しさが入り混じり、鳥肌がたった。
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