永遠の果て
 雨。
 靴にはきかえ、傘を持ってきていないことに気がついた。

『雨は空の涙なんだ』
 顔に似合わず、直樹はロマンチストだった。雨が嫌いな私に、雨が降るたびにこうして言い聞かせてくれたことを思い出す。
 あの頃は、お互い傘を持ってきているのに、仲良く相合い傘をしていた。私を濡らすまいと、直樹の左肩が傘からはみ出て濡れていたのを、よく覚えている。

 決して、小雨ではない。
 次から次へと溢れ出す彼との記憶のせいで、今の私はとてつもなく涙腺が緩くなっていた。
 雨に濡れれば、涙を流してもわからない。
 気がついたら、走り出していた。

 雨が嫌いなくせに、今だけは、心も体も、びしょ濡れになってしまいたかった。
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