キスよりも熱いもの
キスよりも熱いもの

 居酒屋の個室を借り切った同期飲みの席。
 さっきから私は座敷の端で目に見えない攻防を繰り広げている。


「篠塚さんって休みの日何してんの?」


「友達とご飯や買い物行ったり家でのんびりしたりとかかなあ」


「デートは?」


 前のめりで直球の探りを入れてきた石渡くんの目が微かに鋭くなる。


「今は彼氏いないからねー」


 嘘じゃない。フリーなのは事実。
 恋人がいるって事にして牽制してもいいんだけど、もし嘘がバレたら面倒だし。


 矢継ぎ早に質問をぶつけてくる石渡君の手が、さりげなく先ほどまでよりも私の手に近い位置に置かれた。私はテーブルの上のグラスを持って口をつけ、手をもっと自分に近い位置に戻す。
 ジリジリと彼はこちらに距離を詰めてくる。同じように、私もこっそりと遠ざかる。
 だから私達の距離は縮まらない。
 縮めさせない。


「じゃあさ、今度俺と……」

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