年上のあなた、年下のきみ


「見てるよ」


木田くんの言葉を遮るように口を開くと、彼の目がハッと見開かれた。

そんな風に、ちょっとしたことで期待して目を輝かせる姿はとても可愛らしい。

可愛らしいが、それは恋愛感情には繋がらない。


「あなたは今回の主役だもの。顧問の先生から演技指導を頼まれた私としては、最も指導に力を入れるべき存在だと思っているわよ」


にっこり笑うと、木田くんがあからさまに肩を落として落ち込んだ。

そんな彼を見ていると、知らずクスリと笑みが溢れる。

その正直で真っ直ぐなところが、とても可愛い。

こんなにも可愛いと思えるのに、好きか嫌いかで聞かれたら自信を持って好きだと答えられるのに、それでも木田くんは、私の恋愛対象にはなりえない。

年下は総じてみんな可愛くて、ただ……遠くから、その眩しさに目を細めて、見つめていたい存在だから。


「木田くんの演技に、今年の地区大会突破がかかっているからね。みんなの努力を無駄にしないためにも、頑張らないとね。期待してるよ、木田くん」
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