晴れ。晴れ。
コスモスと向日葵
駅から祖母の家は思った以上に近く、空をすっぽりと覆っていたはずの大木は僕の家のそばの公園の木と変わらなかった。
しわくちゃの手のひらで、優しく僕を包んでくれたばあちゃんの暖かな笑みが、消えていた。
月日が過ぎることは良いことばかりではない。いっそのこと今のまま止まってくれたらとさえ思える。

それでも時が進むのは、進んだほうが良いから。きっといつか今日が過去になった時自分を形作った大切な時間だったんだと思えるときが来るから。きっといつか。



明日という言葉は、弱い人間が使う言葉だとだれかがいった。
明日になれば…。
明日はきっと…。

確かにそうなのかもしれない。
でも僕は思う。
今はどうしようもなく苦しいけど…。
明日はきっと楽しいんだって願うしかない。どうしようもなく虚しくなったら、それでも良いと。

橋を渡り、田んぼの脇を通りばあちゃん家まで来た。向日葵とコスモスが一緒に咲いていた。ばあちゃんが向日葵とコスモスの畑のまん中で、こう言った。

大丈夫。



訳がわからなかったけど、きっと大丈夫。
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