執事が男に変わる時
「ふっ」と軽い笑いを漏らして、彼は正面に向き直った。

うつ向く私の顎に手をおいて上を向かせ、何ののためらいもなく唇を奪った。

「んんっ……」

頭の中が痺れる。
彼の舌が私の唇と咥内を味わいつくすまで、呼吸することも忘れて身を任せていた。それが彼への答えだったから。

熱い口づけに腰が折れて座り込みそうになる。彼の腕が腰を支え、そのまま肩を抱き私は宙に浮く。

お姫様抱っこ……?

一瞬我に返って身動ぎするけど、「今さら後戻りは許さない」という彼の一喝で抵抗はやめた。

家族のように慕っていた彼に求められるのなら応えたい。このまま独占されていたい。

私はこの夜、彼からまた知らなかったことを教えられた。

誰かを愛しいと思う気持ち。
愛しい人と繋がる痛みと快感をーーー。
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