悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「まず持ち方がなんか変。こうやって抱えて……」


背中にぴたりとくっついた柳の手が、身体を包み込むように回されて、あたしの手に重なる。

後ろから抱きしめられているみたいな感覚に、ドキッと心臓が飛び跳ねた。


「そう、いい感じ」


耳元で響く声が、甘い余韻を残す。

それがくすぐったくて、でも初めて鳴らしたギターは楽しくて。

あたしは笑いながら、柳に手を操られるがまま。そして。


「……ひより」

「うん? ──っ!」


──振り向こうとした瞬間、唇が塞がれた。


不意打ちの、キス。

目を閉じる間もなく、優しく触れた唇が離れていく。

開けたままの瞳には、イタズラっぽく笑う柳が映った。


「やっと奪えた」

「や、なぎ…………ん!」


離された唇は再び重ね合わされる。

今度は簡単にはやめてくれず、まるでアイスクリームを舐めるように唇を味わわれて。

あたしはもう、身体も脳みそも溶かされそうだ。


「んん、ふぁ……っ」


ここが外だとか、誰かに見られるとか、そんな心配はどこかへ吹っ飛んでしまって。

柔らかく濃密な触れ合いに、あたしはただ酔わされそうになっていた。

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