悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「や……嫌です! あたし──!」

「今さら何言ってんの。一緒についてきたのは君だろ」

「そう、だけど……!」


それはクリスマスケーキを食べるというお誘いにつられたからであって、こんなとこに来るとは思わなかったんだもん!


「まさか本当にケーキだけが目的だと思ったの? ひよりちゃんもやっぱり無知なお嬢様なんだな」


彼はあたしを軽蔑するかのような目を向けたものの、口元は笑みを浮かべていて、それが余計にあたしをゾッとさせた。


抵抗も虚しく、ズルズルと引きずられるようにしてホテルの入口に近付いていく。

あぁぁ、あたしのバージンが~……!!


「ちょっと待った」


──え?

誰かの声が聞こえたと思った瞬間。

あたしの肩に掛かっていた重力がなくなり、代わりに腕を引っ張られる。

そして、ぽすんと。誰かの胸に抱き留められた。


「嫌がってるのに無理やりですか? 犯罪になっちゃいますよ」


落ち着いた声。力強い腕。

見上げれば、170は軽く越えているだろう背丈の男子の、顎のラインが目に入る。

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