愛してる
そうきたか……。正直、全然わからない。男の人って若く見えるっていうしーーそれにしたって、この人は若い。
「23とか……?」
先生はハハッと笑った。「本音かわからないけど、一応ありがとうって言っておくよ」
「えっ、じゃあもっと上ですか?」
「もちろん。26だよ。正確には今年で27だけどね」
ちょっと驚いた。20代後半にはどうやっても見えない。なんなら20歳といっても通用するはずだ。
顔のつくりが綺麗だからだろうか?それに肌質も良い。
「先生、全然若く見えますよ。生徒でも通じるんじゃないですか?」
本心だったが、先生はブッと噴き出して頭を垂れた。
「そこまで言われると、逆に信憑性がないよ」
「……本当なのに」
「そう?」先生は笑っている。「ありがとう」
――やっぱり不思議だ。さっきから自分がすごく穏やかな気持ちになっていくのがわかる。なんでだろう、先生との会話がそうさせているんだろうか。別にたわいもない話なのに。
初めて会った人にこんな感情を抱く自分が不思議でしょうがなかった。
「最初はわからない事もあっていろいろ大変かもしれないけど、まわりに聞くといいよ。もちろん、僕にもね」
「……ありがとうございます」
「じゃあまた」
いつの間にかトイレの前に来ていて、先生は私の肩をポンポンと叩くと1人廊下の向こうへと歩いていった。
――っていうか、トイレに行くって知ってたんだ。
教室のドアに隠れて聞き耳を立てている先生を想像して、笑みがこぼれた。
もっと話したい。ーーそう思った。