課長が私に恋してる?


食べ終わった皿を洗うのは琴子の役目だった。
その間に如月は着替えたり髪をワックスでセットしたりする。



さっさと皿を洗い終わって、
会社に行く用意をしていると後ろから声がかかる。



「高遠」



「?
なんですかー」



てこてこと如月の下まで歩いて行くと、ん、とネクタイを渡される。



「え、なんですか」



「結んでくれ」



「………。どんな変態プレイでーー」



「縛るんじゃなくて結べといったのだが」



もちろん、最初にネクタイを渡された時から何を要求されたかはわかっていた。でも、琴子は恥ずかしかった。



「ご自分でやってくださいよ」



(だって、こんなの奥さんみたいじゃん)



そんな恥ずかしいことを考えてしまうからやりたくないのに、如月はそれを鼻で笑って逆にけしかけてくる。



「こんなことでお前は照れるのか?初心なやつだな。もしかして処ーー」



「わたくしめが結ばせて頂きましょう」



最後まで誰が言わせるかと持っていたネクタイを奪い取る。



そうして向き合って如月を見上げると、彼は満足げにニヤリと笑った。


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