四葉のクローバーの秘め事
「聖!ちょっとこっちに来なさい!」



薙晶が聖を呼ぶ。

大声で、威圧する様に。


工場で作業をしている従業員はまたか、という表情。

それでも皆、何も言わない。



「薙晶ちゃんはどうして、皆の前では悪い子になるの?」



薙晶は冷宝家のプリンセス。

何をしても許される我が儘お嬢様。

それが周りの印象。


でも聖には分からなかった。

薙晶は皆がいないところでは優しかったからだ。



「私は冷宝グループのお嬢様だから、皆とは違う特別な存在なの。そういう風にしなさいってお父様が。」


「でも薙晶ちゃん、私といる時そうじゃないよ?」



「内緒内緒。聖ちゃんは特別なの。お嬢様でいないと怒られるから。お嬢様でいるとね、お父様もお母様も褒めてくれるんだよ。だから、私はお嬢様になるの。」



薙晶に対する清憲と曝の英才教育は凄まじかった。

子供ながらにその異常さには気付いていた。

しかし、お嬢様として振る舞うことで両親が喜ぶことが、薙晶には嬉しかった。


だから、薙晶はお嬢様になった。

褒められると、愛されていると感じたから。
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