«過去アリ少女と訳アリ集団»
『…ねえ侑麻』
眼下に広がる光景は、確かに現実で。
『悲しみや苦しみに度量はないと思うけれど』
二階の窓からでも見えるほど大きくしっかりペンで書かれた文字は確かに、“会いたい”って書いてあって。
『でも、その中でも莉麻ちゃんは多くのことを失ってきたんだと思う。侑麻よりも苦しい思気をしてきたんだと思う』
沖の言葉を聞いて、ようやく悟った。
…ああ、そうか──。
『でもね、そんな莉麻ちゃんでも踏み出したんだ。自分を変えるための一歩を』
僕も莉麻ちゃんも、誰にも話せない苦しみは同じだった。
そしてその苦しみを抱え込むことを諦めた。
でも、違った。
僕には仲間がいた。
過去に傷を負った仲間たちが。
互いに何かをしあうことはなかったけれど、それでも、お互いその存在に助けられてきた。
でも莉麻ちゃんにはいなかった。
何も話せず、誰にも知られず、抱え込むことのないまま、その蓄積された闇に押しつぶされてしまった。
『こんなにも変わってしまった莉麻ちゃんが、その一歩を踏み出せたんだ。侑麻に出来ないことはないんじゃないかな』
…そうだ。
ずっとずっと、諦めていた。
変化することを。
でも、間違ってた。僕は諦めていたんじゃない。心のどこかでずっと待っていたんだ。自分が変わってくれるのを。
それこそが間違いだとも知らずに。
でも今は違う。分かったんだ。気づけたんだ。
みんなのおかげで。
「僕は…莉麻ちゃんに、嫉妬してたんだ」