禁じられた放課後


若いメンバーだけの方が盛り上がるだろうということだったが、直哉には自分も今さら盛り上がれる身分ではないような思いがあった。

既婚者というものは幸せであることはもちろんで、それでもどこか常に引っ掛かっていなければならない心の糸口がある。

それに直哉は少しずつ気付き始めていた。

決して全てが自由ではない。



「早川先生も自分のファンを吉原先生に持っていかれちゃうと思って心配なんじゃないですか。女子生徒達が騒いでましたからね。かっこいい先生が赴任して来たって」



直哉の隣に座っていた音楽教師の鞘野が、ジョッキを片手に早川に流し目を送った。

鞘野はこのメンバーの中で一番年上になるが、そんなことを感じさせないほどの若々しさがあり人受けも良い。



「ダメですよぉ〜先輩!生徒に手を出してはいけません!」


「山根。お前は酔うのが早すぎるよ」



倒れ込んで来た山根を押し上げて、直哉も自分の口にジョッキを運んだ。

何かを打ち消そうとする心の迷い。

一気に飲み干すことで自分の理性を立て直す。




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