禁じられた放課後


そしてそれとは逆に、いつでも大人びた落ち着きを見せる直哉の後ろ姿に自分が惹かれていく様を感じながら、ほのかな恋心に浸る涼香がいる。

涼香はもちろん直哉が既婚者であることを知っていた。

でもそんなことは関係ない。

ただ惹かれるだけのことには何の問題もないのだと、涼香は素直にそう思っていたのだ。



「……先生の奥さんも英語の先生してるんだってね」



涼香が重ねられた椅子をひとつ外して机の前に置いた。

直哉は黙ったまま、自分の折り畳み椅子をその近くに置く。




二人が並べた椅子は夕焼けを見るように窓の外を向き、そこに座る二人も同じように夕焼け色に照らされた。

遠くからは
陸上部の掛け声が聞こえる。






「早瀬は部活とか入ってないのか」



切り出すように口を開いた直哉。

フッと息を吹き出すように短く溜め息をついて涼香が顔をあげた。



「部活ってほどじゃないけど、星を眺める会っていうのがあって。メンバーが五人くらい。先生も入る?」


「顧問になれってこと?」


「うーん、そうかも」




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