禁じられた放課後
神話の中の恋


廊下に響く軽い歩調の足音だけで、その持ち主を判断できるようになってしまったのはいつからか。

放課後になれば自分の教室に訪れてくる涼香。

そんな日々を繰り返すことに、直哉が心苦しさを感じていないわけではなかった。



小さな机を挟んだ両側、優しい陽射しに照らされながら近く向かい合わせて会話をする。

ただそれだけのありふれた光景が、ひとつある心の迷いのせいで、全て禁じられていることのように思えてしまうのだ。





「ねぇ、メガネ外してみて」


「どうして」


「見てみたいから。照れちゃう?」


「……バカか。ほら、どれを訳せばいいんだ」



少し距離を広げるように大きく椅子を引いて腰を掛ける直哉。

足を組もうとする分の幅を、再び椅子をずらすことで机から遠ざけた。



近くに寄るほど、見えない距離までが縮まっていくような気がする。

それを止めようと、直哉は必要以上に自分の行動に気を使っていた。




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