先生の手が触れる時

しばらくの沈黙のあと、車があるマンションの前で止まった

「ここは?」
「…俺の友人夫婦の家……事情は、全部知ってるから…今日はここに泊まって」
「……はい」

私が頷くと先生は車を出る
私もその後に続いて車を降り、先生の後ろをついていく。
そして和田、という表札の前で先生が止まりインターホンを押すと、中から優しそうで綺麗な女の人が出てくる

「雪夜くん!」

その人は先生を見て、そのあと私を見て安心したように微笑んだ

「あなたが…凪ちゃんね……さ、入って」

そう促され、部屋に入ると中には先生と同じぐらいの男の人がいた

先生より背が大きい…

そんなことを考えて、まだ挨拶していないことに気づく

「あ!…あの、遠野凪です……ご迷惑をおかけします…お願いします」

そういって頭を下げる

「気にしないで…私は和田絵理子、絵理子でいいわ」
「俺は、雪夜の友人の和田信だ」

顔をあげればそこには優しい顔をした二人がいた


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