すずめ日記
「祐!」父の力強い声に振り替える。

「1年間は何がなんでも帰ってくるな!絶対に帰ってくるな!!」

期待していた言葉とは裏腹な厳しい言葉に「どうして!?」疑問と怒りと苛立ちと寂しさと悲しさ……どう表現していいかわからない思いが込み上げて、父の顔を睨み付けたまま列車のドアが無情に閉まり列車が静かに動き始めた。

小さくなる父の姿も遠くなる駅舎も大阪駅の改札口を通るたび鮮明に幾度も思い出された。

配属された大阪上町二丁目の新聞販売店は、大学生数名と専門学校生数名、それに従業員数名と新聞の集金業務のみ行うおばちゃん数名に新聞啓蒙のみの営業員数名、事務所に会計のおばちゃんが1人と事務員の男性数名。

普段、顔を合わせる女性は速記の専門学校に通う1つ年上の公美恵ちゃんくらいしかいない男所帯だった。
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