『へるぷ』
晃汰との付き合いは、小学4年生くらいの頃からだ。
そのとき中学生だったお互いの兄が同じ野球部で仲良くしていて、いつからか一緒に遊ぶようになった。
あたしは女の子同士よりも、男の子に混ざってサッカーや野球をするのが好きだったから、男3人に混ざることは苦じゃなかった。
そのうち学校でもよく話すようになって、お兄ちゃんたちと同じ地元の中学に入学してからもその関係は続いた。
そのうちお兄ちゃんたちとは遊ばなくなったけど、それで晃汰と疎遠にはならなかった。
兄たちと同様に、馬が合ったのだろう。
友達というのも幼馴染というのも微妙な、同い年の兄弟という感覚だった。
初めて晃汰から恋愛相談を受けたのは中1の秋。
転校してきた女の子に一目ぼれした、とのことだった。
あたしは別のクラスだったからその子と話したことはなかったけど、ちょっと華やかな子だった。
1ヵ月間相談に乗って、晃汰が玉砕されたあともなぐさめた。
そんなことが何回かあって、だんだん晃汰の好きなタイプやよく使う告白手段などが分かってきた。
「ねえ、海咲って渡来くんと付き合ってるの?」
と友達から時々聞かれるようになったのもこの頃だ。
放課後や休み時間に、晃汰に呼び出されてちょくちょく話していたから、そんな風に見えたんだと思う。
そしてあたしは、いつもそれにNOと答えていた。
それは今でも変わらないけど(今は言われることもなくなったけどね)、この頃は本気でそう思っていた。
晃汰なんて、手のかかる兄弟のようにしか見ていなかった。