クールなお医者様のギャップに溶けてます
嵐のような15分が過ぎ、本山家にいつも通りの朝がやって来た。

ダイニングテーブルに腰掛け、カズくんのお弁当作りに取り掛かるお母さんの背中に向かってお礼を言う。

「お母さん、突然だったのに、ありがとう。お弁当もありがとうね。」

「いいのよ。それより亜樹、体調は大丈夫?」

「うん。ごめん、心配かけて。」

「お父さんもすごく心配してたのよ。あんな風にはしゃいでいたけど。」

「ちゃんとまた謝るよ。」

お父さんの目の下にクマが出来ていたのには気が付いていた。
朝帰りなんて初めてだったし、心配かけて申し訳なかったと反省する。
目が覚めた時に私から電話をすれば良かった。

「あと、結婚もね。嬉しいけど、さみしいのよ。付き合ってる期間が短いのに結婚は早過ぎるだろ、とかさっきカズくんは言ってたけど、お母さんたちはそんな事言わない。昔々の大昔はスピード結婚なんて当たり前だもの。ただ、本当に結婚が決まったら、結婚するその日まで一緒にいて欲しいっていうワガママだけ言ってもいいかしら?」

こっちを向かずに話すお母さんの背中が本当にさみしそうで、涙が出る。

「うん。うん。お母さん、ごめんね。ありがとう。」

「あらあら、泣き虫ね〜。小さい頃は泣かなかったのに。年かしらね?ウエディングドレスが似合ううちに早く嫁に出さなきゃいけないわね。」

小学生の頃以来初めてお母さんに抱き締めてもらった。
うぅ、っとさらに感動がこみ上げてきてお母さんにしがみつき泣いていると支度を終えたカズに「気持ち悪っ!」と言われた。

ムカつくけど、可愛い弟。
クリスマス当日。私は家族の大切さ、ありがたさ、そして絆の深さを再認識した。
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