碧い人魚の海
背が高く、まだ20歳そこそこの青年らしくほっそりしていたがひ弱ではない。姿勢がよく、首筋から肩にかけてのラインがシャープで、手足が長くバランスの取れた体格をしている。
その姿を見ながらルビーは、背中を丸めたロクサムの姿を再び思い描いていた。ロクサムの姿勢が悪いのは不可抗力だ。努力して治るものではない。背骨が歪んでいるのだ。ずんぐりしていて手足が短いのも、あの丸く突き出した背中のせいで身体を伸ばしてぐっすり眠れないからだという気がした。
顔立ちも決して整っている方ではない。鼻はあぐらをかいていたし、目はやぶにらみで目つきも悪い。
ルビーの頭の中で、「人魚も物好きなこった」と嘲る女の人の声に、貴婦人の、「わたくしは美しいものはみんな好き」という声が重なって響いてくる。
あのときルビーはあの女の人に、そんなことない、と言い返すことができなかった。
ロクサムは醜い。かっこよくもないし、頼もしくもない。でも、そんなこととは関係なくルビーには大切だ。だからだれかにロクサムのことをひどく言われると、ルビーは自分のことのように悲しくなるのだ。
ぼんやりしていたルビーを、再び口を開いたブランコ乗りの声が、現実に引き戻す。
ルビーはロクサムの姿を頭から振り払い、ブランコ乗りの言葉に耳を傾けた。
「ぼくの推測が間違いでなければ、彼女はだれかを力づくで従わせようとするような連中のことは、むしろ憎んでるんじゃないかと思う」
ゆっくりと、考え考え、ブランコ乗りは言葉をつないだ。
「あの人は露悪的にそんな風にふるまうことがあるけれども、力に屈する人間を実際に見ることは、本当は彼女を悲しませているんじゃないかと思うことがあるよ」
「なぜそう思うの?」
「そういうクソみたいなやつらは、実は貴族連中には多いけれども、まず彼女は、彼らと一切の交流を断っているように見える。まあ、ぼくのはたまたま見聞きしたものだけでの判断でしかないから確証があるわけじゃないけど。あと、判断材料としては、使用人との関係……かな?」
「普通に見えるけど」
「うん。普通だね。それで……なんていうのかな、対等だよ」
不思議そうに見返すルビーに、ブランコ乗りは説明した。
「彼らは、結構軽口を叩くんだ。横で聞いていると面白いから、今度注意して彼女と他の使用人とのやり取りを聞いてみるといいよ」
その姿を見ながらルビーは、背中を丸めたロクサムの姿を再び思い描いていた。ロクサムの姿勢が悪いのは不可抗力だ。努力して治るものではない。背骨が歪んでいるのだ。ずんぐりしていて手足が短いのも、あの丸く突き出した背中のせいで身体を伸ばしてぐっすり眠れないからだという気がした。
顔立ちも決して整っている方ではない。鼻はあぐらをかいていたし、目はやぶにらみで目つきも悪い。
ルビーの頭の中で、「人魚も物好きなこった」と嘲る女の人の声に、貴婦人の、「わたくしは美しいものはみんな好き」という声が重なって響いてくる。
あのときルビーはあの女の人に、そんなことない、と言い返すことができなかった。
ロクサムは醜い。かっこよくもないし、頼もしくもない。でも、そんなこととは関係なくルビーには大切だ。だからだれかにロクサムのことをひどく言われると、ルビーは自分のことのように悲しくなるのだ。
ぼんやりしていたルビーを、再び口を開いたブランコ乗りの声が、現実に引き戻す。
ルビーはロクサムの姿を頭から振り払い、ブランコ乗りの言葉に耳を傾けた。
「ぼくの推測が間違いでなければ、彼女はだれかを力づくで従わせようとするような連中のことは、むしろ憎んでるんじゃないかと思う」
ゆっくりと、考え考え、ブランコ乗りは言葉をつないだ。
「あの人は露悪的にそんな風にふるまうことがあるけれども、力に屈する人間を実際に見ることは、本当は彼女を悲しませているんじゃないかと思うことがあるよ」
「なぜそう思うの?」
「そういうクソみたいなやつらは、実は貴族連中には多いけれども、まず彼女は、彼らと一切の交流を断っているように見える。まあ、ぼくのはたまたま見聞きしたものだけでの判断でしかないから確証があるわけじゃないけど。あと、判断材料としては、使用人との関係……かな?」
「普通に見えるけど」
「うん。普通だね。それで……なんていうのかな、対等だよ」
不思議そうに見返すルビーに、ブランコ乗りは説明した。
「彼らは、結構軽口を叩くんだ。横で聞いていると面白いから、今度注意して彼女と他の使用人とのやり取りを聞いてみるといいよ」