碧い人魚の海
 ブランコ乗りは、ルビーの泣きはらした目と、尻尾から形を変えてしまった2本の脚と、その左足首で色を変えてしまったアンクレットに、ちらりと目をやったが、何も言わなかった。
 ルビーを馬車の後部座席に座らせながら、ブランコ乗りは、初めて口を開いた。

「赤毛ちゃん。選手交代の時間だよ。きみは帰ってゆっくりお休み。あとはぼくがうまくやるからね」
 それから彼は、二頭立てを走らせる一座の御者に向かって伝言を頼んだ。明日の晩には顔を出すからと座長に伝えてくれ。それだけ言い残すとブランコ乗りは、貴婦人の屋敷に戻っていった。
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