誘惑して、キス


なんて綺麗な目なんだろう。

黒目は吸い込まれてしまいそうなくらい真っ黒で、瞳を縁取る睫毛は女の子のように長い。

目尻は少し上がりぎみだけど、診察の時間になれば、とろんと優しく下がる。私はその目が大好きだ。


私の質問に先生は片眉を上げる。若干面倒な表情を浮かべているもののそれは見ないことにする。

それよりも、今はこっちの話題の方が大切なの。

「好きなタイプ?」

私よりもずっと大人な先生のことだ。

少なくとも私のようなちんちくりんよりは、もっと大人でセクシーな女性が本来タイプなのかもしれない。


「や、やっぱりボンキュッボンですか……!?」

だとしたら困る!自慢じゃないけれど、私の体は中学生の頃から成長していないのかと疑いたくなるほど幼児体型なのだから。

そんなことを考えながら、両手に持ったグラスをぎゅっと握る。

すると先生の口が微かにカーブを描いた。


「俺の好きなタイプはな、」

そう呟きながら、だんだんと顔が近づいてくる。

なに、なんなの。

先生との距離が近づく度に、顔が熱くなる。少なくとも私の体温は、確実に2度は上がっているはずだ。だって、私の頬はこんなに熱い。

どうしよう、だめだよ、こんなところで。みんないるのに、恥ずかしい。

そんな言葉がぐるぐると頭を巡る。ふわふわと揺れる視界で先生を見つめると、先生は私の持っているグラスを手に取った。


奪ったそれをテーブルに置く。そして更に顔を近づける。

「……せんせ、」

「よく聞けよ」


私の右耳に限りなく唇を寄せると、私にしか聞こえない大きさで言った。


「俺が好きな女は、俺だけにエロい女だ」

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