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紫乃はちょうど来たエレベーターに乗り込み、俺は慌ててその後を追った。
紫乃の無表情が、感情のない視線が締まる扉の前の俺を捉えながら、扉が俺の目の前でゆっくりと閉まる。

「し―――……」

彼女の名前を呼びかけた。呼んだところでどうなる問題でもないのに。

でも
「意気地なし」とはもう思われたくなかった。

ガッ!
俺はエレベーターの扉に乱暴に手を入れると、閉まりかけていた扉をこじ開けた。

「晃希―――」
彼女が俺の名前を呼ぶ。

俺はエレベーターに乗り込むと、紫乃は一歩後退した。そのまま壁に追いつめるようにじりじりと紫乃に近づくと、壁に片手を突いて紫乃を俺の腕の中に閉じ込めた。
こうやって改めて見ると―――紫乃は随分と小さく華奢だった。
けれどその小さな体には俺が想像する以上のクリエイターとしてのエネルギーを詰まらせている。
紫乃のつむじが見えて…きれいに渦巻くその場所に俺はそっと口づけ。
紫乃が目を吊り上げる。
「どいてよ」
本日三度目の台詞を聞きながら、俺はそれを無視して彼女の細い顎に手を掛けた。

つむじじゃなく、今度は
唇に―――

俺の腕に紫乃を閉じ込めたまま、何度も角度を変えキスを繰り返す。
「……ん!……ふ…」
突然の口づけに紫乃は抗うように俺の胸を拳で叩いてきたが、俺はされるがままそれでも唇を離さなかった。
やがて諦めたのか紫乃は手を下げると、俺の背におずおずと手を伸ばしてきた。
唇を離して―――


「十年後の返事。
待たせてごめんな。
今日、俺の部屋で白いドレスを着てみせてよ」


俺の言葉に紫乃は大きな目をさらに大きく目を開いてまばたき。
「白いドレスなんて私作ってないわ」



「作れるだろう?お前なら
シーツと言う名のドレスに。


もう意気地なしなんて言わせない」



俺は紫乃を横抱きに抱えて、彼女がびっくりしたように俺の首にしがみついてきた。
「それはあなたのお部屋に連れてってくれるってこと?」
「そうだよ」
「じゃぁあなたが私を包んでくれるのね。白いシーツのドレスで。
ずっと待ってたわ」



待たせてごめんな。
でも

シーツのドレスの次はお前がデザインしたウェディングドレスが待ってるよ。



~END~







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