からくりの向こう


私は壁に突き飛ばされた。

それも少し痛いくらいに。でも押された肩の痛みなんかよりも、この心が痛い。

ゼンが、壁を叩く。

ドン。

私がするりと身をかわそうとしたけれど。

ドン‼

両手に挟まれ、逃げ場を失った。

ううん。

わき腹が無防備だ。

そこに膝蹴りを食らわして逃げることはできる。本当に逃げたいのなら。

でも…。

「リン、好きだ」

ゼンの真っ直ぐな思いが、私の身を強く引き止めていた。

同時に、答えを出すべきだと。

「…ごめんなさい」

俯き加減で伝えた答えは、ゼンの唇によって塞がれようとしていた。

____ゼンの思い。

私は、顔を背けた。


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