からくりの向こう


ゆっくり。

ゆっくり。

ゼンの唇が近づいてくる。

ここは、からくりの向こう。

忍びの向こう側。

一枚の壁を隔て、私はゼンの口づけを受け入れた。

ここは私たちの世界。

私たちだけの、偲びの世界。

暗くてもいい。

なにも見えなくてもいい。

あなたを感じられるなら。

それでいい。

私はもう。

なにもいらない。


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