思い出の中にいるきみへ
「どうして、こんなことをするの。嫌いって言ったのに」

 腕の中から解放すると、里桜はこぶしを握り締めて、怒りに燃えた瞳で俺を睨みつけていた。

「好きだから。俺を見てほしいから」

「理玖が好きなの。理玖だけなの。理玖しか欲しくない」

「ヤツのことはいい加減忘れろ。どんなに想ったって報われることはないし、それよりも生きている人間を見ろよ」

「何にも知らないから。そんな勝手なことが言えるのよ」

 喉を詰まらせ、目にはいっぱいの涙。
 里桜は泣くまいと歯を食いしばって、気丈にも耐えているように見えた。

「ごめん。そうかもしれない。でも、いつまでもヤツに縛られているおまえを見ていたくないから。せめて、感情は隠すな。苦しいんだったら俺に言えよ。悲しいんだったら俺の前で泣いていいから。俺が全部受け止めてやる」

つらさを淋しさを痛々しい強がりさえも……全てを包み込んで守ってあげたい。

「……うっ…く…」

 
 嗚咽が漏れて溢れた涙が里桜の頬を伝い落ちていった。

 
「だから……嫌いなのよ。勝手にズカズカと、人の心の中に入り込んできて……顔も見たくない。あんたなんか大嫌い」

 里桜は悪態をつきながら俺の胸に縋りつく。

「理玖、理玖……理玖」

 ヤツの名を恋しそうに呼びながら、俺の腕の中で泣きじゃくった。





ドーン。ド、ドーン。

 爆音が響いて頭上に花火が上がる。
 ひときわ大きな華がいくつも咲き乱れて、色鮮やかに夜空を飾った。

 刹那の輝き。

 瞬きする間もなく、
 それは…… 
 儚く、消えていった。
< 10 / 10 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

普通な学校生活を送るための傾向と対策

総文字数/46,331

青春・友情132ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
中学に入学早々、わたし(川原里花)は 悩んでいた・・・・・ 親友の桜木緋色のこと、 モテすぎて、困るのよね。 わたしは、普通で静かな学校生活を送りたいのに。 そのためには・・・どうしようかしら?
表紙を見る 表紙を閉じる
甘い香りに誘われて大きな屋敷へと入って行った河合結愛は、そこで御曹司の綴木羽琉矢と出会う。 羽琉矢に気に入られた結愛は不法侵入を盾にあれこれ要求されてしまい、困りながらも要求に応える彼女も次第に羽琉矢に惹かれていく。 けれど、彼の素性を知った結愛は、深入りしないように離れようとするのだが、羽琉矢がそれを許さなかった。 ♦♢♦♢♦♢♦♢ 河合結愛(21)大学四年生 普通の家庭育ち。卒業後は地元に帰る予定 羽琉矢とは住む世界が違うからと逃げ腰で一線を引きたがっている × 綴木羽琉矢(26)綴木グループの後継者 一目惚れした結愛が逃げないように、どう繋ぎ止めようか、あれこれ思案中。 2026/8/8~
お嬢様は今日も美しい

総文字数/18,242

ファンタジー36ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
私がお仕えしているお嬢様は美しく教養も兼ね備えたフランチェスカ・ローシャス公爵令嬢。そんなお嬢様が学園のダンスパーティーで婚約者である王太子から婚約破棄されてしまった。 王太子の隣には男爵令嬢。お嬢様にいじめられたと訴えているのだが、こちらには身に覚えがない。 どんな理由があれど、婚約破棄は望み通りなので、異は唱えない。むしろ願ったりかなったり。 でも、よろしいのでしょうか? お嬢様との婚約は王命だったのですが……                                                                                                                             2024.2.29

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop