思い出の中にいるきみへ
「どうして、こんなことをするの。嫌いって言ったのに」

 腕の中から解放すると、里桜はこぶしを握り締めて、怒りに燃えた瞳で俺を睨みつけていた。

「好きだから。俺を見てほしいから」

「理玖が好きなの。理玖だけなの。理玖しか欲しくない」

「ヤツのことはいい加減忘れろ。どんなに想ったって報われることはないし、それよりも生きている人間を見ろよ」

「何にも知らないから。そんな勝手なことが言えるのよ」

 喉を詰まらせ、目にはいっぱいの涙。
 里桜は泣くまいと歯を食いしばって、気丈にも耐えているように見えた。

「ごめん。そうかもしれない。でも、いつまでもヤツに縛られているおまえを見ていたくないから。せめて、感情は隠すな。苦しいんだったら俺に言えよ。悲しいんだったら俺の前で泣いていいから。俺が全部受け止めてやる」

つらさを淋しさを痛々しい強がりさえも……全てを包み込んで守ってあげたい。

「……うっ…く…」

 
 嗚咽が漏れて溢れた涙が里桜の頬を伝い落ちていった。

 
「だから……嫌いなのよ。勝手にズカズカと、人の心の中に入り込んできて……顔も見たくない。あんたなんか大嫌い」

 里桜は悪態をつきながら俺の胸に縋りつく。

「理玖、理玖……理玖」

 ヤツの名を恋しそうに呼びながら、俺の腕の中で泣きじゃくった。





ドーン。ド、ドーン。

 爆音が響いて頭上に花火が上がる。
 ひときわ大きな華がいくつも咲き乱れて、色鮮やかに夜空を飾った。

 刹那の輝き。

 瞬きする間もなく、
 それは…… 
 儚く、消えていった。
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