私の好きな人。
「……黙ってて悪かったな」

そうして今、私は坂崎さんに連れ出されて公園のベンチに座っている。
雨はいつの間にか上がっていて、手には無理やり持たされた缶コーヒー。

「だから、相手にしてくれなかったんですか?」
「は?」

ポツリとつぶやいた言葉に坂崎さんは一瞬怯んだ。

「ただの事務社員が何も知らずにあなたを慕ってるのが面白かったんですか!?」
「いや……俺放蕩息子なのは事実だぞ。三男だから会社継ぐとかも一切ねーし」
「でも会社がどうのって……」

詰め寄る私の額に手をやり私と距離をとろうとする坂崎さん。
当然リーチも力も負けるから、私は簡単に引き離される。

私と坂崎さんの関係はいつもこうだ。近づこうとしたって簡単に引き離される……

「言っただろ。この仕事してるといろんな事が耳に入ってくるんだよ」
「え?」

でも、いつもよりも優しい瞳を覗かせていて。

「誰が会社に一番楽しそうに来るかとか、誰が目下の人間を労えるかとか、誰が会社の前に吸殻を捨てる人間で、誰がそれを拾ってくる人間かとか、そーゆー上からは見えない人の本質が見えてくんだよ」
「……」

そう言って私の額から手を離し、ぽんぽんと頭を優しく撫でる。

ああ。
坂崎さんの手って大きいんだな。
坂崎さんの手って温かいんだな。

初めて知った……

「坂崎さん」

今は帽子をかぶっていないから、明るい髪と優しい瞳がいつもよりはっきり見える。

「好きです」

何度目か分からない私の告白に、坂崎さんは少しだけ口角を上げて、

「あっそ」

素っ気なくそれだけ言って背を向けた。


-Fin.-
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