瞳をそらさないで
 カナは、わたしから見ても、守ってあげたくなるような小柄で可愛らしい女の子だ。きっと彼の隣に並んだら、お似合いのカップルだろう。
 そんなカナを安心させようと、わたしは、きっぱりと告げる。

「わたしは、もっと大人びた男の人が好みかな」

 そうつぶやきながら、なにげなく視線を巡らせると、わたしは、渋谷と目があった。
 遠くから、振り返るような姿勢で、じっと見つめてくる。
 そして、わたしが眉を寄せた瞬間に、彼は口角をあげてみせた。

 ――どういうこと? その笑みの意味はなに?
 ほとんど話をしたことがないのに、笑う意味がわからない。
 わたしをバカにしているの?

 そのとき、カナがわたしのそでを軽く引っぱった。

「ほら、いまもこっちを見ているでしょ? ヨーコさんじゃないとすると、――あたしを見ているのかなぁ?」

 はしゃいだ声音となって、カナがささやいてくる。
 わたしは、ふいっと彼から視線をそらしてから、カナへささやき返した。

「そうかもしれないわ。だって、カナは可愛いもの。彼の好みのタイプじゃないかな?」

 ――そうよ。
 カナとは違って可愛げのないわたしなんか、見つめてくるはずがないわ。

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