キミノ、テ。


[坂野]というのは、当時同級生の中でも、
男女問わず人気もので、嫌われものだった日下とは、
180度違う感じの男だった。分け隔てなく接してきては、
人と接することが嫌いな日下を、困らせていたものだ。

そして高校卒業後、たまたま道で会ってしまったときも、
電話番号を半ば強引に教えることになったのだった。


「お前も行くよな、同窓会。」

「いや、仕事が忙しくてさ、多分行けないと‥」

話している途中だというのに、坂野は割り込んで話し出した。

「そんなこと言わずに来いよ!どうせまだ人嫌いで、
全然人と関わりないんだろ?そういうの絶対良くないって、
俺たちもう28だぞ、そろそろ結婚してたっておかしくないんだからさ。」

日下は返す言葉が見つからなかったため、黙っていた。

「よし、決まりな!21日、絶対来いよ、約束な!」

勝手にそう決めて、勝手に坂野は電話を切った。


人嫌いで人の意見など、どうでもいい日下だか、
なぜか昔から坂野にだけは弱かった。
それは坂野の人柄からくるものなのかもしれない。

日下は受話器を置き、また深くため息をついた。




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