キミノ、テ。


「えっ、えっと‥何かあったんですか?」

智子は素直に聞いた。
だが彼女はなにも答えようとはしない。
黙ってただこちらを見て、助けてくれと訴えかけていた。

隣に座っていた旦那さんが口を開いた。

「いえ、突然申し訳ない。今いろいろとお金が要りましてね、
参ってるんですよ、こいつは。忘れてください。」

少し微笑みかけ、そう言った。
しかしおばあさんの方は今だ何か困っている様子だ。

しばらく静かな店内の中で、小さなBGMだけが流れ、
食事を終えた老夫婦は、ただ一言、
どうもありがとう。と、帰っていった。

智子には、なにか嫌な予感がして、しょうがなかった。


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