オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ

希和side



私が負傷してしまったせいで、

いつの間にか、京夜様はお酒を口にしなくなった。

私を気遣ってくれていることはひしひしと伝わってくる。

何をするにも私の顔色を窺ってるし、

何より、自分ファーストだった彼が

私を最優先に考えて下さるようになったのだから。

それが凄く嬉しいんだけど心苦しくもあって。

彼の為に何も出来ない自分が本当に不甲斐なくて。

何をしたら許して貰えるんだろう。

どうしたら、彼の傍にいられるんだろう。

そればかりが脳内を駆け巡る………。

真面に彼の顔を見ることすら出来ない。

せめて、彼の好物でもテーブルいっぱいに並べて、

好きなお酒を存分に味わって貰いたい………それしか思い浮かばなかった。


「2人でもホームパーティは成立するんだな」

「フフフッ、そうみたいですね」


手作りピッツァや有機野菜のマリネが気に入ったご様子。

酢が効いた料理はあまり好きじゃない彼だけど、

こっそり取り寄せたいよかん酢がお気に召したようだ。

仄かに甘い柑橘の味わいが、酢のツンとした尖った部分を和らげてくれている。


京夜様は私の体を気遣って、最初の1杯だけ軽めのカクテルを作って下さり、

2杯目からはノンアルコールドリンクを用意して下さった。

本当は考えたくもない現実を忘れたくて、

記憶が無くなるくらいウォッカやウイスキーを浴びるほど飲みたかったのに。

けれど、お酒にのまれた状態になった所で、現実は変わらない。

京夜様に醜態を晒さなくて済むのだから、彼には感謝しないと。


京夜様は少し酔われたのか、

仕事用の手帳とタブレット端末を交互に眺め、独り言を言い始めた。

そんな彼の横顔をじーっと見つめ、

酔っていてもカッコイイなんて狡いと思いながら、マスカットをパクリ。

すると、視線はタブレットに向けたまま口元がこちらに向き、しかも、開いている。

……………えぇ~っと、これは、マスカットをくれってこと?

見てもいないのに、私がマスカットを食べたことに気づいたの?

ホント、どこに眼がついてるんだか。

マスカットを1つ手に取り彼の口元に運ぶと、表情一つ変えずに私の指ごと……。

何事もなかったように振舞ってはみたが、

指先に感じる唇と舌先の感触に身悶えてしまった――――。


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