オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
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「専務、申し訳ありません。最後にこの書類だけお願い出来ますか?」
「本当に最後だろうな?」
「っ………、はい」
机上を片付け、出掛ける準備をしていると、常務が稟議書を差し出した。
俺はジャケットを椅子の背もたれに掛けて再び腰を下ろした。
「申し訳ありません」
「俺が留守の間、宜しく頼むな」
「はいっ、それはお任せ下さい」
鋭い眼光を向けると、萎縮気味に直立してる。
別に脅したいわけじゃないんだが。
常務は信頼のおける男だ。
俺に媚を売ることも無ければ、仕事に手を抜くことも無い。
社長(俺の父親)が見抜いただけはある。
頻繁に出張で不在にしても、この男なら安心して留守に出来る。
俺は素早く書類に目を通し、サインをした。
「良く纏まってるが、もう少しサンプル資料があるといいな」
「はい、分かりました」
「それと、チーズフェスの準備は進んでるか?」
「はい、会場内の配置も終え、現在最終的な試食段階に入っております」
「そうか」
「専務がお戻りになられる頃にはパンフレットも完成していると思いますので」
「ん」
「不在の間のメディア等の対応は、これまでと同じで宜しいでしょうか?」
「あぁ、宜しく頼む」
「承知しました。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
稟議書を受け取った常務は、安堵の色を覗かせながら深々と頭を上げた。
そんな彼の肩に手を軽く乗せ、ポンポンと優しく叩いて部屋を後にした。
彼女が俺の元を去って9ヶ月が過ぎようとしていた。