オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
京夜side
5月中旬、母親が執行役員となっている慈善事業の手伝いで
フランスのロワール渓谷の古城に到着した。
年に数回慈善事業が行われるが、今回はこの地域で開催するらしい。
世界遺産にも登録されるだけあって、とても荘厳な雰囲気に圧倒される。
手入れの行き届いた庭園も素晴らしいが、
城主の子孫が現在も居住していることもあり、
調度品や家具も含め、歴史的価値のある物が沢山保存されている。
日本にも城は沢山あるが、現存の天守閣は12城しかなく、
欧州の城の状態と比べると、やはり天災の多い国だという事がよく分かる。
しかも、古城を維持するためだろうが、
世界遺産の古城に宿泊出来るのだから、素晴らしい。
従妹のみかが惚れ込むのも無理はない。
その昔、社交界に無理やり連れ出された俺とみかは、
最初のうちは端の方で静かにしていたが、
『御影』というステータスと容姿も相まってあっという間に注目の的に。
みかは性格こそ史上最悪と付くくらい最悪だが、
見た目は俺が言うのも何だが、結構整ってる。
日本人離れしたはっきりとした造りと愛らしさが混在してて
一流ブランドの顔にもなるほどだから。
そんな彼女が社交界デビューしたのが古城だった。
だからなのかもしれない。
彼女の夢が『真のプリンセス』だと、幼い頃から口にしていたのだから。
俺は古城に宿泊して、この地域のあちこちでイベントを手伝うことになっている。
勿論、御影関連の人間もいるが、
慈善事業のパートナーである各国の理事なども多く、気が抜けない。
マスコミやパパラッチの目があるから、羽を伸ばそうにも伸ばせないし。
俺はどこにいても休まる場所が無いということを痛感する。
彼女と過ごしたあの日々が懐かしい。