オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ


約3時間ほどの公演を鑑賞し、その後にみかと共に代表らと挨拶を交わした。

オペラ座を後にしたのは22時を少し回った頃。

繁華街には多くの人がナイトライフを満喫しいる。

そんな人達を横目に歩き出すと、強い力で腕を掴まれた。


「京夜、こっち」

「ん?」


俺はてっきり行きつけのバーに飲みに行くのかと思っていたら、

みかはバーとは反対方向を指差した。


「飲みにいくんじゃないのか?」

「うーん、飲むには飲むんだけど、今日はちょっと優雅にね」

「フッ、何が優雅にだよ。酒が入ったら豹変するくせに」

「煩いわねっ!いいじゃない、たまには羽を伸ばしたって。今日は程々にするわよ」

「…………普段は羽を伸ばせてないって言ってるようなもんだぞ」

「…………いいから、行くわよ!」


図星だったらしい。

普段は気高い感じのみかだが、旦那の前では借りて来た猫状態なのか?

まぁ、新婚というのもあるし、文化的違いも多いだろうから、

それなりに苦労はしてるという事か。


みかは強引に俺の腕に腕を絡ませ、

ぐいぐいと引っ張りながらオランジュリー美術館の方へと歩き出した。


「車を呼ぶか?」

「ううん、いい。たまにはイルミネーション眺めながらゆっくり歩きたいし」

「姫様生活が辛いか?」

「………自分で選んだ道だもん、辛くない。ただ、自由な時間はだいぶ無くなったけどね」

「そうか」


少し落ち着いた雰囲気に見えたのは、少し我慢することを覚えたようだ。

今まで何不自由なく暮らして来ただけに、多少の葛藤はあるだろう。

だが現実が理解出来ていれば、何とかなるだろうな。



オランジュリー美術館の隣にあるコンコルド広場を抜けると、目の前にはセーヌ川が現れた。

すると、みかが指差す方に視線を向けると、そこにはクルーザーが。

なるほどな。

観光客にお勧めだというナイトクルージングか……。

パリ市内を移動してると、送迎バスを見かけたりする。

でも、観光客に紛れて体験するなんて出来やしないし。

盲点だったかもしれないな。


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