オレ様専務を24時間 護衛する Ⅱ
「勿論、婚約という形は最悪な場合であって、それ以前に事が旨く運べば、ご苦慮には及びません」
「………えぇ、そうですね」
私は反応に困り、隣りにいる彼に視線を向けた。
テーブルの下でそっと握り返される手。
私がこの手を決して離さなければ、
きっと、大丈夫ですよね?………京夜様。
私は視線を彼女へと向け、
そして、決意でもある一言を発した。
「分かりました。出来る限りの事をさせて頂きます」
「あっ、有難うございますっ!!」
「ただし、条件があります」
私の言葉にほんの少し表情を歪めた彼女。
けれどそれも一瞬で、すぐさま柔和な表情に。
「はい。勿論、伺います。その条件とは……?」
私は深呼吸して、言葉を紡いだ。
「例え、フリだとしても………。いついかなる場所であっても、私は彼から片時も離れません。それだけをご承知願います」
「………分かりました。どうか、宜しくお願い致します」
彼女は腰を上げ、深々とお辞儀をした。
新商品が全国的に展開するのは来春だが、
御影百貨店が先行的に独占販売を開始するのは2週間後。
私が再び影の存在となるまで、あと2週間。
それまで、私は笑顔でいられるだろうか?