白い世界
僕は箱の中にいる。真っ白い箱の中。
何もかも真っ白。服も机や椅子、ベットや電気何もかも真っ白。

毎日同じ頃に起こされる。真っ白な自分の部屋から、真っ白な大広間に連れて行かれる。
そして長いテーブルの席に付かされる。
僕と同じ服を着た年齢層がバラバラの人達と一緒に、一斉に食事をする。
僕はハンバーグが好きだ。ハンバーグの横にはいつも細長い豆がついている。それも好きだし、それと一緒に出されるスープも好きだ。
全員同じ食事。

食事が終わると、トイレに順番に連れて行かれる。
毎日同じ時にトイレに行っていると、その時間になると出したくなり、それ以外の時は、特に行きたくもなくなる。特別お腹をこわしたりしなければ。
僕は一度だけ、漏らした事がある。その時は真っ白な服に嫌なシミができた。
トイレの後直ぐに真っ白ないつもの服に着替えさせられた。
何もなかったように、事が終わり、いつも通り過ごした。

箱の中には看守がいる。真っ白い仮面を被り、真っ白い被り物をしているので、どんな髪なのか、どんな表情なのか全く分からない。
声だけは分かる。ハンバーグをハンバーグだと知った時「ハンバーグ」と教えてくれた。
それはとか、ハンバーグだよとかではなく「ハンバーグ」だと言われた。それ以外の会話は必要ないんだと思う。

箱の外には塀がある。
天に届きそうなほどの高い真っ白な塀。
誰も入って来れないし、誰も出ていけない。
塀の外からは、音も聞こえない。

ここで生活している人と話しをしてみた事がある。
僕と全く同じ境遇の人もいたし、訳の分からない事を言うだけの人もいたし、同じ場所を見つめ続ける人もいる。
どこかおかしいのかな?とも思ったけど、僕がおかしいのかもしれない。

何も分からない。

名前も知らない。

食事とトイレが終わると、少し自由な時間がくる。
外に出る人も居るし、部屋に戻る人もいる。
僕は本を読む。
本だけは沢山ある。外の事には一切触れない本。
物語ばかりだ。それでも面白い。
何も無いよしはマシだと思う。

随分前に一度色々知りたくて暴れた事があった。
僕は電気の流れる機械を押し付けられ、看守が持ってる棒で死ぬほど殴られて、狭い個室に入れられた。
手足の自由がきかないベットに縛られて、声が出せないほど、体力が消耗するまで放置された後、部屋に戻された。
口の中がパサパサになって、唇がひび割れた。トイレに行っても何も出なかった。
フラフラして歩けなかった。

あれから僕は暴れない。
何も得ない。
意味なんてない。

そんな風に僕の毎日は続く。
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