\胸きゅん注意報/
ショートケーキ

「今日も相変わらず気合が入ってるな」

静かなオフィスの給湯室で、香り漂うコーヒーを愛用のマグに注いでいた私の背後で。

腐れ縁で同期の佐伯隼人が挨拶もなく姿を現した。

「なによ。文句でもあるわけ?」
「いや、別に」

人を小ばかにした口調の同期を一瞥すると、

「毎回毎回ほんとよくやるよな」

呆れた表情を浮かべてうんうんと一人頷いていた。

「女をとっかえひっかえするアンタには言われたくないわ」
「お前もさほど変わらねえだろ」

と、お互いに悪態を吐いたところで。

佐伯のマグを手に取ると、そこにコーヒーを注いでやった。

「はい」
「サンキュ」

小さくお礼を言った佐伯が私の手からマグを奪っていく。

ほんとにコイツは…。

「なあ」
「なに?」
「それ、どのくらいかかるんだ?」

佐伯があごを軽く突き出すようにして上げた先には、今日の合コンのために昨夜頑張った私の指先だった。
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