めぐりあい(仮)
1st.

はじまり







不倫って、何でするのって。


そう思ってた。


結婚するって、


そんな簡単なことじゃない。


好きじゃない人と、


結婚する人なんていないし。


他の人を好きになったら、


結婚相手に失礼だし、って。


絶対お父さんのようには、


なりたくない。


私のお父さんは、


不倫をして、


お母さんと離婚した。


それからお母さんは、


朝も夜も働くようになって。


だから私は、


絶対不倫なんてしない。


子どもながらにずっと、


そう思ってた。





「綺麗だよ」





広いベッド。


暖かい温もり。


少しの月明かりが照らす、


この場所で。





「ん…っ、」





甘い息を漏らす。


声を抑える私に、


可愛いと囁くこの言葉に、


顔を赤らめる。






「ふっ、っ…」





優しいキスを受け入れる。


大きい手が、あたしをかき乱す。


愛されてるって。


毎回そう実感出来るのは、


この人が甘く優しく囁くから。






「愛してる」






それを聞く度に、


私は涙を流す。


何でかは分からない。


嬉しくて。


恋しくて。


寂しくて。





「私もっ…」






微かに微笑むこの人は、


世間でも有名な建設会社のお偉いさん。


といっても、まだ28歳。


役職は、はっきり知らないけど、


現場を仕切るくらいの立ち位置では


あると思う。





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