業務報告はキスのあとで

 早くもこの会社で上手くやっていけるのか不安になってきてしまった私は、カバンの中からハンカチを取り出そうとして手を止める。


「あ」

 いつもカバンの中に入れてあるはずのハンカチ。今日はそれが無いという事実を今更思い出し、私は小さく肩を落とした。

 ああ、本当についてない。今日の星座占い、私の牡牛座はきっと最下位だ。そうでないなら、今日は何故こんなにもついていないことばかり起こるのだろうか。


 ───ガチャッ

 今朝の占いを見て、ラッキーアイテムでも持って来れば良かったかも。なんてことを呑気に考えた私の背後から、突然ドアを開く音が聞こえてきた。

 少し遅れてその音に反応した私が振り向くと、そこにいたのは如何にもチャラそうな男の人だった。


「ごーめん、遅刻しちゃった」


 見た目が凄くチャラそうだとか、そういうわけではなくて。なんというか、滲み出ている雰囲気がチャラい。

 髪は明るめの茶色で、無造作に整えられている。顔は、世に言うイケメンだ。ただ、それだけではなく背もスラリと高い。加えて、スタイルも良い。

 まさに、非の打ち所がない。そんな容姿の男の人。

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