激愛

するとしばらくしてあたしがようやく食べ終えた頃キョロキョロ辺りを見回していた秀一君が
あたしに向き直ると待っていたように口を開いた



「ねえ・・・・瞳ちゃんってまさか一人暮らし？ご家族の方はいないの？」



「あ～言ってなかったっけ？母親は病気で亡くなって父親と今は二人暮らし」




「ふ～んそうなんだ・・・・「おい、あの廊下にある段ボールはなんだ？お前引っ越しでもすんのか？」




秀一君の声に龍さんの声が重なる



龍さんは廊下に積みあがった段ボールにちらりと視線を移すとそう言葉を発した



リビングから嫌でも目に付く段ボールの山



そう、お父さんの海外転勤が来週に迫っていて・・・・この荷物はお父さんの物




あたし・・・お父さんがタイに行ってしまったらこのマンションに来週から一人暮らし




家事全般は大丈夫だけど、淋しくないって言ったら嘘になる




夜遅く帰って来ても朝御飯だけは必ずふたりで食べる様にしていたお父さん




その朝の数時間だけが親子のコミュニケーションの場と言っても過言ではない



お互いの学校や仕事のことなどいろんなことを話す場になっていた




それがなくなると思うと・・・・正直言って淋しいな、来週からはひとりで朝御飯なんだ




ちょっと淋しさが込み上げて苦笑いを浮かべた