【完】狼様の最愛。
「どうして!? どうして私達を置いていったの!?」
お母さんは、言った。
私に。
「哲郎さんは、どこにいったの?」
グッと歯を噛み締める。
奥歯がギリッと音を立てた。
「……最愛には、分かるはずがない。」
中本さんが低く冷たい声で、呟くように言う。
「僕がどれだけあの時、大変な思いをしたかなんて最愛には……!」
手が振りかぶられた。
私よりも大きい、大人の男の人の手が私にへと落ちてくる。
体は動かなかった。
八年前のように、ジッと迫り来る恐怖を見つめていた。