口の悪い、彼は。
 

10分後にようやく解放された時には、私は身体に力が入らないくらいに溶かされてしまっていた。


「起こしてやった礼くらいはもらわねぇとな」

「~~っ」


そう言いながら濡れた唇をぺろりと舐める千尋もセクシー過ぎて、視界でもやられてしまう。

悶えそうになる私を差し置いて千尋はむくりと身体を起こし、私を見下ろしてくる。


「ほら、起きろ。本気でヤバいんじゃねぇか?」

「誰のせいよ……っ!昨日だって千尋が……っ」

「あ?お前がねだってきたんだろ?」

「そんなことしてないもん!」


寝かせてくれなかったのは千尋なのに!ときっと睨み付けた時、ふわりと私の上半身が持ち上げられ、ちゅっと唇をぶつけられた。


「んっ」

「この続きは夜だ。早く行け」

「!」


そうだよ。

今はこんな風に言い合いをしている暇はない。

むしろ、笑顔でいたい日だ。

力の戻りきれていない身体を必死に奮い立たせて、私はするりと千尋の胸の中から抜け出す。


「うん!じゃあ、先に式場で待ってるね!千尋も遅れないで来てね!」

「あぁ。わかってる」


服を着終わって立ち上がった時、横から「派手に転けんなよ」という言葉が飛んできて、私は千尋に笑顔を向けて「任せといて!」と頷き、部屋を出た。

 
< 124 / 253 >

この作品をシェア

pagetop