口の悪い、彼は。
 

「うるせぇ口は塞ぐのが一番だからな」

「なっ、うるさくなんかしてないでしょ?好きって言っただけで」

「それがうるせぇっつってんだよ」

「っ」


口答えした私に対して、千尋が眉間に皺を寄せて低い声でそう言ってきて、私は言葉に詰まってしまった。

「好き」と伝えることさえ拒否されてしまうなんて、さすがに堪える。

たまに千尋はこういう風に私を突き放すような態度を取ることがあって、そのたびに私は本当にこの場所に居てもいいのだろうかと戸惑ってしまうのだ。

自信がなくなって目線を落としてしまった時、千尋の大きな右手が私の頬を両側から親指と人差し指でむにっと挟むようにして掴んだ。

そのせいで私の唇はあひるのように尖って、不細工な表情になっていることだろう。


「は、はなひへひょ。ひひほっ」

「お前今、妙なこと考えただろ」

「っ!」

「はぁ。“そんなこと”、何度も言われなくても知ってるって言ってるんだ。一度言われればわかる。そんな落ち込んだような顔すんな。アホ」

「!ん……っ!」


……口は悪いし、優しい態度なんて滅多に取ってくれない。

だけどその裏には、ちゃんと私を想ってくれている気持ちがあると感じさせられて、私をどんどん虜にしていく。

振り回されっぱなしだけど、そんなこの人のことが、私はすごく好きなのだ。


「……は……っ、千尋……、好き」

「知ってる」

「……っん」


唇を押し当てられて深く入り込んでくる彼にもっと近付きたいと、私は千尋の首に腕を回して、求めた。

お姉ちゃんたちの結婚式の光景を頭に思い浮かべ、いつかは私も千尋とそうなれればいいのに……、と祈りながら。

 
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