口の悪い、彼は。
 

想像するとわくわくしてきて、今の今までテンションが上がりきれない私がいたのに、一気に浮上した。


「すっごく素敵です!早く本物が見たいです!」

「マジ?高橋にそう言ってもらえて良かったー。実はさ、これ、家具のデザイン事務所を間に挟むことになってるんだけど、あいつのところで使ってもらえるって話になってるんだ」

「……まさか、お姉ちゃんの?」

「そう!念願叶ったり~だぜ!」

「わぁわぁ!喜多村さん、すごいです!」

「だろー?」


喜多村さんがいひひと嬉しそうに笑うのを見て、私も顔が緩む。


「頑張って形にしてやるぜ!」

「楽しみにしてます!」

「うん」


いつだったか、喜多村さんが「いつか知夏と一緒に仕事するのが夢なんだ」と目をキラキラさせて話してくれたことがあって。

その頃はまだ喜多村さんも企画の仕事にたまに呼ばれるくらいだったけど、ここまでこれたのも喜多村さんの努力の成果だと思う。

夢というものは努力と願いを絶やさなければ、たとえその時は可能性が低くても、いつかはチャンスが訪れて叶うものなのかもしれない。


「っていうか、部長戻ってこねぇな。打ち合わせしたいことがあるから15時になったら企画から戻って来いって、朝言われたんだけど」


喜多村さんの放った「部長」という言葉に、つい心臓が跳ねてしまった。

付き合いだして半年くらい経った頃には“付き合っている人が同じオフィスにいる状況”に慣れていたはずなのに、ここ数日は“部長”の名前が出るだけでいちいち反応してしまう私がいる。

それもこれも、余計なことを考えているせいだ。

 
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