口の悪い、彼は。
 



「……ニヤニヤすんな。気持ち悪い」

「あっ、彼女に向かってそんなこと言うなんて酷い!いいでしょ?千尋の心の中を聞けて嬉しいんだもん」

「はぁ。それ言うの何度目だよ。もう聞き飽きた。いい加減、ウザい」


私と千尋はシーツに包まり、ゴロゴロと寝転がりながらまどろむ。

全身を包み込むのも、心の中を覆い尽くすのも、ほわほわとしたあたたかさだけど、千尋の口から出てくるのは相変わらずツンツンとした言葉だ。

……でも、千尋の大きな手は私の手をゆるりと揉むようにいじっていて、すごくくすぐったくて顔もにやけてしまう。


「っていうか、驚いちゃった。千尋がまさかみんなの前であんな風に言うなんて」

「……誰かさんがうるせぇからな」

「!……なにそれ。ま、まさか私のため、だったの?」


私が周りに黙っていることで、自信が持てないって言ったから?

だからみんなの前で私の名前を呼んでくれたの?

私は上半身を少し起こして千尋の顔を覗き込むけど、そこにいるのはいつものように涼しい表情をした千尋で、やっぱりそこから出てくる言葉もさらりとしたものだ。


「さぁな」

「!……やっぱり千尋って意地悪だよね。私には本心教えてくれたっていいじゃん……」


私がぽつりと愚痴ると、千尋は気が抜けたようにくすりと笑みをこぼした。

 
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