口の悪い、彼は。
 


「ん?何でもないって感じじゃねぇだろ。本当に大丈夫か?なぁ、高橋」

「!!」


俯いていた私の顔を喜多村さんがひょいっと覗き込んできて私は慌てて顔をそらすけど、二の腕をぐっとつかまれてしまって、それ以上逃げられなくなってしまう。

顔を近づけてきた喜多村さんとバチッと目線がぶつかった。


「!高橋、どうしたんだよ!?泣いてんじゃん!」

「なっ、何でも……っ!」

「泣いてんのに、何もないことはないだろ!?」

「!!」

「ほら、どうしたんだよ?言ってみろって。なっ?」

「……っ、う~……っ」


頭を抱き抱えられてしまった私はもう観念するしかなかった。

ぽんぽんと撫でてくれる喜多村さんの手が優しい。

お姉ちゃんと同じくらい親身になってくれる喜多村さんには何かを隠そうとしても、きっと無駄なのだ。

隠し事なんて、できない。

私はそのまま子どものように泣きじゃくりながら、今日あったことをポツリポツリと喜多村さんに伝え始めた。

 
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