口の悪い、彼は。
 

「……ま、まさか、本人にも私が好きだってことがバレっ、バレっ」

「おい。ぶつぶつうるせぇんだよ」

「ひぃっ!!!」


突然聞こえてきた低い声に私は身体をびっくぅ!と跳ねさせる。

顔を上げるとそこにはいつの間にか戻ってきていた、まさに“私の好きな人”の張本人である部長の姿があった。

部長に気持ちがバレているのかもしれないと思うと、どんな顔をしたらいいのかわからなくて、私はとにかく焦りまくってしまう。


「あああのっ、ぶちょ……っ」

「高橋」

「へっ!?」

「お前は趣味が悪いな」

「……はいっ?」

「それに、き……、はぁ。」

「ぶ、部長?」

「まぁいい。仕事終わってねぇんだろ。早く終わらせろ」


部長はそう私に言葉を掛けると、くるりと身を翻してデスクにすたすたと戻っていってしまう。

私はそんな部長の後姿を呆然と眺めていた。

……趣味が悪いって何の話?

しかも、今、言葉を途中で止めたよね?

「まぁいい」って、何がいいの?

そんなの部長らしくなくない?

っていうか、今の、聞かれてない?

っていうか、私の気持ちはバレてるの?

バレてないの?

バレてるから変な態度を取られてるの?

どっち!?

こんな中途半端な状態で仕事なんて出来るわけないじゃん!!

 
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